徒然もの書きぱん

適当にアニメとかについて書いてます。今期は何について書きましょうか。

マンガ『ひとりぼっちの地球侵略』の感想と疑問

はじめに

 こんにちは。

 今回は現在ゲッサンで連載されている「ひとりぼっちの地球侵略(作:小川麻衣子)」というマンガについて書きたいと思います。実はこのマンガ自体は最近知りまして、ネットの試し読みをきっかけに購入を決断したというものになります。ちなみに僕がこの漫画を知ったきっかけはこちらの記事になります。eroge-pc.hatenablog.jp
 現在4巻まで読み終えた状態であるため、最新巻がどういった状況ということは全く知りません。なので現状での感想と疑問点であるとお考えください。この作品に関してはネタバレはあまり問題になりませんが、以下の記事で簡単なネタバレがあるのでお気をつけください。

作品のテーマ

 この作品は宇宙人である大鳥希(おおとりのぞみ)と地球人である広瀬岬一(ひろせこういち)を軸としたキャラクターの心理の変化と人間関係の掘り下げがメインとなる。岬一に感化されて徐々に変化していく希とともに、希の影響を受け覚悟を決めていく岬一。このふたりを中心に複数のキャラクターを巻き込みながらストーリーが進行していく。

感想

全体

 4巻まで読んだ感想としては、タイトルからは想像できないようなほのぼのさがあった。“侵略というぐらいだからバンバン人が死ぬ”という印象だったが今のところそういう描写はない。おそらくこれ以降も無いと思われる。なぜならこのマンガのタイトルである侵略は人類に対しての侵略ではないと考えられるからである。これについては別途述べる。

キャラクターについて

 まず第一に大鳥先輩がかわいい。小さな子どものように感情をストレートに表現するキャラクターであるため、笑顔に汚れがないとでも言えばいいのだろうか。普段の行動が裏付ける本当の笑顔であることを無意識に理解できる。それと対照的に、殺意を持っている時の圧倒的な負の感情が恐ろしい。感情が豊かといえば聞こえはいいが、感情の振れ幅が大きすぎて恐怖心が湧いてくる。ヤンデレを彷彿とさせるよな情緒不安定さである。でもそれ以上に可愛い。可愛い。
 次にアイラ=マシェフスキーがかわいい。大鳥先輩のサイコっぽい可愛さとは異なるクール系の可愛さ。3巻では彼女のコンプレックスやクラスメイトとの関わりあいから普通の女の子であることを意識させるとともに、冒頭や巻末では宇宙人の血を持つものの歪さを確認することができた。1巻分をうまくつかい彼女のキャクターを印象づけられている。彼女が登場する3巻が4巻中いちばん好きな巻だった。
 最後に主人公の双子の弟である広瀬凪(ひろせなぎ)について。一見チャラそうだが、見た目以上に頭が切れるタイプ。過去と現在ではだいぶギャップがあるため、これからも注意深く見ていく必要がある。

 どのキャラクターも4巻の時点でキャラクター性は十分に発揮されている。あとはこれからどう展開していくか。

ストーリーについて

 読んでいて最も印象に残っているのは、2巻156~162ページのおじいさんがコーヒー豆を煎っているところである。岬一はその場面で目に涙を浮かべている。自分の夢は喫茶店を引き継ぐことであり、店を切り盛りしてきた祖父の技を見て自然と涙が浮かんでしまったという場面。
 岬一は自分の体が普通ではなくなったことを知り、なおかつ希と以下の様なやりとりをしている。

 希:私と地球を征服するんでしょ?
岬一:…うん、するよ。…俺も色々腹が決まってきた。

このように先輩に協力することを誓っている。つまり、自分の今までの夢を諦めるわけではないにしても、夢に対して踏ん切りをつける必要がある。祖父の作業を見ていて無意識ながらそのことに気づいてしまったのだろう。自分を人間ではなく宇宙人に変えてしまった心臓をわし掴みにしているのは、この心臓が自分を夢から遠ざけた憎むべき存在でありながら、自分を助けてくれた感謝すべき存在であり、大鳥先輩との絆でもある複雑さもあいまってのことだろう。自然と溢れる涙から、岬一がどれだけ祖父の跡を継ぎたかったかが伝わってくる。
 このような複雑な感情を抱えている岬一に気づきながらも、「朝ごはんにしようか。」と気づかないふりをするおじいさんの優しさで胸がいっぱいになった。このふたりの関係がどれだけ良好で信頼しあっているかが伝わってくるとてもいいシーンである。

読むときに注目して欲しいポイント

 ストーリーの部分で述べた部分にも該当するが、この漫画ではセリフのないコマこそ注目して読んでもらいたい。もちろん台詞があるコマも大事なのだが、それ以上にセリフがないからこそ伝わることもある。3巻の文化祭での戦闘とその後の空気といった無音の間が散りばめられている。この間を楽しむことがこの漫画を楽しむことにつながってくると思う
 だからこそ、1度目よりも2度目読むときのほうが面白く感じる。1度目の感想は「ストーリーはそれほどおもしろくない。」であったが、2度目の感想は「なるほど、これがこの漫画のおもしろさか。」と気付かされる。スルメ漫画という言葉がよく似合う大変面白い漫画になっている。何度も何度も、読んで、噛み締めて。それがこの漫画の面白さだとわかると思う。

読んでいて浮かんだ疑問

1.オルベリオは昔地球に住んでいたこと

 オルベリオ人は人型であり、文字通り宇宙に行った人なのではないか。宇宙に行けるほどの文明があることを考えると、文明が一度退化している可能性がある。この作品で時間が明文化されていないことから未来であるという可能性もあり、時代設定については現代であると考えない方がいいかもしれない。

2.凪のかいていた大量の汗

 3巻において保健室で大量の汗をかいて寝込んでいた。前後には病気のような描写はなく、後半はなにか企んでいるような雰囲気を出している。凪の汗は病気によるものか。それとも宇宙人への怯えか。
 2巻の時点で大鳥先輩が宇宙人であることにはおそらく気づいている。そのため怯えという線はないと思ったが、2巻の時点では過去の記憶はなく大鳥先輩の力を知らなかっただけという可能性がある。過去を知ったことにより、宇宙人という存在への恐怖が彼を支配し、あのような体調不良を招いたのかもしれない。

3.心臓を失った大鳥先輩への影響

 彼女は心臓を失ったことにより長い眠り付いている。また過去の力は大量の敵を追い払うことができるのに対して、現在の力では単体の敵に対しても苦戦している。先輩は心臓が治癒したから大丈夫と言っていたが、実は治っておらずそこの治癒を継続しているために力を発揮できないのかもしれない。

4.先輩の過去の記憶と今の記憶

 現在の先輩はオルベリオが滅んだことは知らず、今もその星のために地球を侵略しようとしている。彼女が持つ記憶の整合性がどれほどとれているのだろうか?
 また、過去の彼女は落ち着きもなくガキ大将のような女の子だった。お面をつけていることも相まってか、彼女の異常性が強く現れていたように感じる。あらためて振り返ると1巻序盤の彼女もお面をつけていたし、一度も素顔を見せたことがなかったからこそお面をつけて再度登場したのかもしれない。お面というアイデンティティを保つために。過去に唯一素顔を見ているのは凪だけである。彼が唯一本当の大鳥希のちからを知っているのである。

5.先輩の魔法の効果が岬一に対して切れる

 トイレの一件といいリコの変身といい、先輩がかけた魔法が岬一の周辺だけうまくはたらかないことがある。そこでこの魔法について一度考えてみる。希がかけた魔法は岬一が言いかけたように日本でいうところの言霊に該当するのかもしれない。耳にした言葉によってその情景を思い浮かべ、それを形にするようなものなのだろう。岬一に対してその力がうまくはたらかないということは、岬一は魔法を阻害する思考の持ち主である。または言霊を自分のもので塗り替えることができる。つまり彼も魔法が使えるということを示しているのだろうか。

6.侵略と征服

 このマンガでは侵略と征服という言葉がよく用いられる。

侵略
他国の支配下の土地等を、侵入して奪い取ること。


征服
武力で敵を負かし、支配下におくこと。

似たような意味を持つものの、これらの言葉のニュアンスには違いがある。要するに侵略は“武力を使わないものを含み”、征服は“武力を用いる”ということである。1話の先輩の言葉「二人で一緒にこの星を征服しましょう!」を補完するならば、「二人で一緒に宇宙人を倒して地球を手に入れましょう!」ということになると思う。あくまでも武力により打ち負かす敵は地球人ではなく宇宙人だ。また侵略するのはこの地球であり、地球人ではない。そのため先輩は地球人に対して特に何も行動していない。危険を脅かすおそれのある宇宙人に対してだけ行動している。

7.守るための侵略とは

 1話ではおじいさんの命を特に守ろうとはせず、岬一の命のみを守ると宣言している。岬一が望んだからこそおじいさんを守ったし、自分の身が傷ついてもそれを貫いた。最初から岬一を仲間にするためにとった行動であり、それだけ岬一を仲間にしたかったのだと思う。先輩にとって岬一は本当に特別な存在なのである。

まとめ

 今回は4巻までの感想とこの漫画の魅力、気になるところの洗い出しを行いました。文中にも書きましたが、1度読んだときはそれほど印象には残らない漫画でした。しかし2度目3度目と、どんどん印象が変わっていくこの漫画の面白さに気づきました。薦めてくださって感謝しています。僕のブログを読んで少しでも気になった人はこちら(ひとりぼっちの地球侵略 小川麻衣子 - コミック小学館ブックス 公式配信)で試し読みが出来ます。読んでみて気に入ったら続きも買ってみてください。少しでもこの作品の魅力が伝わればと思います。

 以上です。それではまた別の記事でお会いしましょう。

ひとりぼっちの地球侵略 1 (ゲッサン少年サンデーコミックス)

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ひとりぼっちの地球侵略 2 (ゲッサン少年サンデーコミックス)

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ひとりぼっちの地球侵略 3 (ゲッサン少年サンデーコミックス)

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ひとりぼっちの地球侵略 4 (ゲッサン少年サンデーコミックス)

ひとりぼっちの地球侵略 4 (ゲッサン少年サンデーコミックス)