冴えカノスピンオフ「恋するメトロノーム」2巻の感想と考察|冴えない彼女の育てかた 恋メト
こんにちは。
冴えカノ大好きなぱん(@frenchpan)でございます。今回は恋するメトロノームの2巻の感想記事となります。部分的にマンガのシーンを載せながら紹介したいと思います。がっつりネタバレをしていくので、まだ本作品を読んでいない人はこの記事を絶対に読まないでください!
冴えない彼女の育てかた 恋するメトロノーム 2巻 (デジタル版ビッグガンガンコミックス)
- 作者: 丸戸史明,武者サブ,深崎暮人
- 出版社/メーカー: スクウェア・エニックス
- 発売日: 2014/08/20
- メディア: Kindle版
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1巻の感想記事はこちらになります。www.palepalette-blog.com
追記(2015/05/26)
友人とディスカッションし、このマンガにおける重要だと思われる部分を補足しました。
それでは始めます。
詩羽スランプ編
編集者としての苦悩
倫也は編集者としては成りたてで、だからこそ編集者としては的確なサポートが出来ない。それは詩羽先輩にも言われた。だからこそ町田さんは一人の人間としてサポートするようなアドバイスを送った。
でも倫也は違った。一人の編集者として詩羽をサポートしたいのだ。だからこそのセリフだ。
ただ一方的に憧れているなら、作品を好きでファンでいるだけなら、今の自分でも許せる。けれどもし、詩羽先輩と同じ高さに立って、同じ道を歩むことになったら、今の俺のままじゃ未熟すぎて、途中で絶対うまくいかなくなる。同じ道を歩むなら、相手に寄り添うだけなんて、嫌だ。相手からも本当の意味で必要とされないと嫌だ。
倫也は一人の編集者として作品を創作し、一人のファンとして純粋に楽しむために、そしてなにより詩羽のために全力を出したいのだ。その気持が熱いほど伝わってきた。
町田さんのアドバイス
そんな倫也の言葉を聞き、町田さんは大人としてアドバイスするのではなく、同じ編集者としてアドバイスをする。
作家の求める解決策を、提示できる編集になりなさい。
倫也のとった行動
町田さんのアドバイスを聞き、倫也は行動する。
この行動はひとつの決別だ。今までの、先輩と後輩という関係との。そしてこれは一人の編集者である倫也から、ひとりの作家である詩羽への挑戦だ。今までのぬるい関係ではなく、同じ作品をつくり上げるための仲間としての挑戦だ。
詩羽がこの時が何を思ったかはわからない。仮にも詩羽は人気ラノベ作家である。一端の素人編集にダメ出しされるなんて悔しいはずだ。でも倫也の気持ちは受け取ったはず。だからからこそ、詩羽は倫也の気持ちに全力で答える。
倫也の行動が導いたもの
倫也は自分の能力の限界を知っている。ただのなんの能力もないただの消費オタクだ。だからこそ、詩羽にプロットに対して質ではなくそれを上回る量で勝負する。彼女の案を超えられなくてもいい。彼女が自分の壁を壊す突破口を作ればいいのだ。
それに対し詩羽は、倫也が提示した一つの案から突破口を見つける。
案27 主人公に助言を与えてくれるサブキャラの存在
詩羽にとってこの案だけは違った。それは彼女にとって、前作恋するメトロノームで成し遂げられなかった思いがあったからだ。それはヒロインとして結ばれなかった沙由佳の存在である。そんな沙由佳を今作に絡めることで、道を切り開いたのだ。さすが霞詩子である。
倫也がとった行動はただ多くのアイディアを提示しただけだ。しかしそれは詩羽にとって大きな意味を持った。壁を壊す道標を立てたのだ。アイディアを出すということは行き先を示すこと、アイディアを活かすのは道を作ることだ。
また、詩羽が仕掛けた罠とは、沙由佳自身である。沙由佳という自分の分身を幸せにしなかった、自分の過去にはまったのである。
倫也は、作者の詩羽を罠から救い出すことで、初めて対等な編集者であることができた。
今回は、沙由佳が主人公とくっついちゃうかもね?
このセリフからは詩羽の女性としての自信が見て取れる。過去に沙由佳を捨てた自分から抜け出し、また新しく自分を始めようとしている。
沙由佳に潜む詩羽の想い
沙由佳は詩羽にとって、分身でありなにより自分自身だ。そんな沙由佳が新作で登場し、主人公にアドバイスを送る。これはひとつの敗者復活戦だ。前作品で自分に負けた詩羽が、挑戦するためのきっかけだ。そんな詩羽が沙由佳とともに再び一歩を踏み出した。
恋するメトロノーム編
女子高校生作家 霞詩子
詩羽は初めて応募した作品で、大賞を受賞した。詩羽は作家としてデビューに大いに自分自身期待をしていた。自分の作品を買ってくれた人へ、大いに感謝し、毎日が充実していた。
だがそんなにうまくはいかなかった。売り上げが芳しくなく、2巻での打ち切りが決まった。
恋するメトロノームに捧げた想い
ヒロインである沙由佳は、詩羽の分身である。
そんな分身が死ぬ。それは詩羽にとって自分の死と同義だ。
安芸倫也との出会い
詩羽から見て倫也はただの子供だ。自分の理想を掲げ、自分の理想に対してただがむしゃらに努力する。自分のオタク文化への愛を貫こうとする。
自分も同様に努力してきた。ただその努力が認められず、打ち切りになったことは、彼女にとって事実である。だからこそ彼女は倫也に嫉妬している。倫也は努力によって道を切り開らき、オタク文化とともに心中する覚悟がある。詩羽は自分の作品とすら心中する覚悟がない。それだけの想いしか、自分の作品に込められなかったからだ。
TAKIがもたらした転機
でも本当に覚悟などなかったのだろうか?そんなはずはない。覚悟がなければ良い作品は生まれない。そんながむしゃらな努力を見抜いたTAKIがブログに取り上げたことで、恋するメトロノームは脚光を浴びる。TAKIによる、熱く、人間臭く、まっすぐ突き刺さる言葉によって。
足掻いてるんだよ。めっちゃ揺れてるんだよ、この作品。主人公のモノローグもぶれぶれ出し、ヒロイン沙由佳の反応もコロコロ変わる。でもそれって、キャラが固まってないんじゃない。そうやって、悩み、心変わりする人間として固まってるんだ。この作品、すごく泥くさいんだ。多分、作者もすごく足掻いてるんだ。だから面白いんだ。
情熱が凄いから。努力が凄いから。一生懸命だから。
なにが凄いって、TAKIの言葉だ。泥くさく、心に刺さる文章で圧倒している。情熱と、努力と、一生懸命さが伝わってくる。こんな文章を見せられたら、読まざるをえない。
そんな気持ちになったのは詩羽も一緒だ。こんな感想を書かれたら書かざるをえない。自分の作品を、自分の手で、自分の全力をぶつけて書かざるをえない。詩羽にとってTAKIの言葉は揺れ動かされるものがあった。
詩羽の決心
詩羽がこの作品に込めたのは、読者の心に突き刺さるような恋愛だ。自分をモチーフとしたキャラクターが幸せになるべく書いた作品だ。
泥沼にしてやる。私の分身が不幸せになってもいい。けれど、激しい恋を、狂おしい恋を。そして、いつになるかわからないけれど、喜びを、祝福を。
TAKIが心をこめた文章が、詩羽の心をつないだのだ。
もう迷わない。私は自分の作品と運命を共にする…!
TAKIへの想い
TAKIは変わらずブログで恋するメトロノームを紹介してくれている。
めくるめく、三角関係の世界へようこそ。
俺はこの作者を侮っていた。一巻が出たとき、沙由佳以上のヒロインなんて、俺の生きてる間にはもう出ないんじゃないかって思ってた。けれどまさか、同じ作品の、しかも次の巻でいきなり出てくるなんて誰が思う?真唯すげー!激萌え!頭おかしくなるくらい可愛い!
そんなTAKIのブログに詩羽はコメントを返そうとする。
はじめまして。いつもホームページ拝見させていただいています。正直身に余るというか、少しどころじゃなくくすぐったいお褒めの言葉をありがとうございます。TAKIさんの言うように、未だに迷いつつ、一歩一歩前に進むことしかできない未熟者ですが、TAKIさんの言うように一生懸命、魂を削って書いている自負だけはあります。これからも頑張って、たくさんの作品を作っていきたいと思います。
霞詩子拝
しかしこの言葉をTAKIに届けることはなかった。それはなぜか?
詩羽は自分の作品を救ってくれたTAKIに心からの感謝している。続編を救ってくれただけでなく、作家としての成功を手助けしてれた。そしてなにより、自分の作品を好きだと言ってくれている。そんな思いが重なり、TAKIに恋をしている。けれども、自分の作品で自分の分身の恋が結ばれていない。だから沙由佳が恋を終えるまで、自分も恋をしない。そんな決意の表れであるように感じた。
町田の昇進
全くいい印象のなかった編集長だが、町田をデスクに昇格させてくれた。これで力のない有望な作家を、守ることことができる、と。
そんな上司に嫌味を言いつつ、最後はしっかり感謝を伝える。大人としての敬意を見せた。
新作執筆編
全体を通して
詩羽の表情の変化
この作品で見るべきポイントの一つが詩羽の心情の変化であるとともに、それに伴う表情の変化だ。具体的には、大賞に選ばれ恋するメトロノームを出版した後、TAKIのブログを読んでやる気を取り戻した後、恋メト最終巻での倫也との決別以降である。
大賞に選ばれ恋するメトロノームを出版した後
詩羽は自分の作品が認められた自信とこれから満ち足りた作家人生が待っていることへの気持ちの高まりが見て取れる。この際の表情としては、やや幼く、子供っぽく見える。まだ作家というものがどういうものかを知らない状態である。
TAKIのブログを読んでやる気を取り戻した後
打ち切りが決まった後、暗い表情であった詩羽であるが、TAKIのブログを読んだことによりやる気に満ち溢れている。この際の表情は、こんな読者をがっかりさせてはいけないという根性が見て取れる。まだ終わってはいけない、まだやるべきことがある。そういう表情である。
恋メト最終巻での倫也との決別以降
恋メトは倫也を喜ばせるために書いていたと言っても過言ではない小説だ。その小説が否定され、その結果を受け止められなかった詩羽は沙由佳を幸せにできなかった。その後、自分の作品を出すにあたり、今までには強く見られなかった作家としてのプライドが芽生えている。これは彼女の成長だ。
まとめ
今回も勢いで感想を書いてしまいましたが、2巻は最高の回でした。今までの詩羽の思いとかが、ぐわーっと襲いかかってくるような。読むたびに泣いてしまいました。
TAKIは詩羽にとって救世主であり、倫也はともに歩む事のできる編集者です。そんな両者にいい作品を作っていってほしいと思いました。そして真唯にそっくりの真由。このキャラクターが3巻でどう絡んでくるのかが楽しみ。まあ3巻読んでるんで話知ってるんですけどね。3巻の感想も近々あげますね。
あと友人が言っていたのですが、このマンガは小説では表現できない詩羽の表情が見どころだと言っていました。ほんの些細な表情の変化で彼女の感じていることがわかり、彼女の成長を感じられると。たしかにその通りで、このマンガが小説になっていたら大筋は同じ感想でも、些細な部分の印象はだいぶ代わったと思います。それだけこのマンガはキャラクターの表情を大事にしている。だからこそ深くキャラクターを理解し、交差すつすることができる。そのように感じました。
以上です。それではまた別の記事でお会いしましょう!