徒然もの書きぱん

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映画『カメラを止めるな!』感想―――劇場の笑いと演者のラストの表情

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 こんにちは。

 最近話題になっている映画『カメラを止めるな!』を見てきました。どういった映画なのかの前情報は一切知らず、ただなんとなく「カメラを止めるな」という言葉に惹かれて見に行きました。上映中はよくできていておもしろいと感じた一方で、上映後はモヤモヤとした感情に支配されました。

本作で起こる笑い

 序盤のゾンビ映像に惹かれるものはなかった。意味がわからない部分を挙げればきりがない。もちろんカメラが切れないという点においては素晴らしい挑戦であったように思う。この映像には一切の笑いも起こらず感情を殺された時間だった。
 次にこの映像が出来上がった過程を見せられ、数々のトラブルとその対応に笑いが起こっていた。真剣に映像を作ろうとしている人たちに、通常ではありえない人的な被害が起こる。その被害の内容がおもしろいだけでなく、それがワンカット映像という不自由なシチュエーションにはまっていることがおもしろい。映画というカットにカットを重ねて作った作品にもかかわらず、本来持ち合わせていない一回性をもつことがこの作品のおもしろさの真髄であろう。基本的に本編映像では入ることのない「カット」という声が、これほどまでに作品の締めくくりにふさわしい作品も珍しかった。
 それにしてもこの笑いは一体なんだろうか。映画が終わってからそのことばかり考えさせられた。奇々怪界だった映画のピースがはまっていく感覚が納得につながっていたところが大部分を占めていたがとは思う。ただそれだけではなく、絶対に失敗できないシチュエーションでありえないような場面に直面しつつも、そのがむしゃらな対応を画面越しに笑ってたのかもしれない。この感情を自分で整理しきれなかった。

誰が作品を評価するのか

 先程述べたように、序盤のゾンビ映像はおもしろいと思えなかった。おそらく何度あの映像を見ても同じように思うだろう。つまりあの映像単品を、私はいまいちな作品だと評価している。それはあの映像作品に参加しなかったテレビ局のおばちゃんも同じであろう。
 そしてそれは参加していた人たちも感じていたことだと思う。主演男優はところどころ文句を言っているし、主演女優はやりたくないことは事務所のせいにして一切やらない。そして数々のハプニングである。それでも最後までやりきったあとの制作の顔には、なんとも言えないような満足気な顔をしていた。もちろん彼らもあの映画が良い出来になったとは思っていないであろう。それでもあの瞬間にできる全てを詰め込み、無事に30分撮りきれたことになんとも言えない満足感があったのだと思う。あらゆる創作には評価がつきまとう。ある人には良いと思えるものでも、別の人には良いと思えない。全ての創作はそういうものである。しかし最も大切なのは、作った自分たちがどう思うかだと思う。他者の評価に振り回されるのではなく、作った自分たちが良いところも悪いところも認められるかである。映画を撮り終えたあの瞬間を、彼らがどう感じたのかが大切なのである。同じ瞬間に同じ目的のために奮闘したことが、ラストの表情につながっていった。

真剣が真剣な笑いをつくる

 本作の1番の見所は、エンドロール中の制作の映像であると思う。この作品はメタ視点な映画であるがゆえに、それを強調するように撮影のシーンを入れているように感じた。当たり前のことだが、本作は劇中作を撮っている描写を撮ることが必要になる。つまりワンカットのあの映像を作るために2度同じ構図で演技をしていることになる。そして劇中でカメラマンが転んだように同じように転び、首を切られたマイク担当を配置したように同じように死体を配置するのである。そうやってあの映画がつくられている。カメラに写っている部分だけが映像ではないのだと、実際の撮影現場を見せることで気付かされた。

まとめ

 本作についていろいろと思うところはありましたが、素晴らしい内容だったと思います。伏線の張り方も良かったですが、それ以上に回収の仕方が良かったです。
 それにしても映画館で巻き起こっていた笑いの正体が気になってしょうがないです。