徒然もの書きぱん

適当にアニメとかについて書いてます。今期は何について書きましょうか。

たまゆら~卒業写真~ 第三部「憧 ―あこがれ―」の感想といつも近くにあるあたりまえなもの

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はじめに

 こんにちは。

 今回は劇場版三作目となる『たまゆら~卒業写真~ 瞳―あこがれ―』について書きたいと思います。少しづつ彼女たちの卒業が近づいてきており、ちょっと心に来るものがあります…。
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感想

前半【まおんの進路騒動】

 前半は、麻音には経営している旅館を継がせないと父が決断した話。
 麻音にとって両親が経営している旅館というものは傍にあって当たり前の場所であり、自分が帰って来るべき場所であると考えている。そのため父親の発言は、麻音にとっては認識できないほど予期していないものであったのだろう。自分にとって当たり前なものが遠くなるという感覚。それはとても恐ろしいものであり、認められないものであるということはみんな同じだと思う。
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 また麻音は自分がこの宿を継がせてもらえない可能性として、最初に覚悟、次にお金について考えたのではないかと思う。複数の夢の中から旅館を継ぐという選択肢を選ぶ自分の覚悟が足りないから。だから父親を説得しようと家に帰った。そこで話を盗み聞きしてしまい、借金へと思考がつながっていったのではないかと思う。実際には借金はないのだが、この旅館がどうやって成り立っているのかを“知らなかった”麻音は、その仕組みを“知るために”経済学を専攻しようと決めた。自分の知らなかった知識を少しでも身につけ、この旅館のために何かできることを探そうとしている。そんな麻音の覚悟や優しさや思い入れを強く感じた。自分の意見を両親に向かって堂々と自分の考えを伝えるというのは、いつになっても難しい。そこを照れなく伝えられる彼女から、両親への、友達への信頼を大きく感じることが出来た。
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 麻音の父の発言は娘の将来を狭めないようにという思いやりを持った発言だったのだろうけれど、娘を信じられなかったというか見くびっていた部分に関しては少し悲しかった。それでも背景にあるのが娘への思いやりである以上、その行動自体が間違っているとは思わない。器用に振る舞うことが出来ないのも含めて父親からの愛であり、そこのバランスを母親とうまく取れているように感じた。最終的には互いを理解し合える良い家族だなと再認識させられた。

後半【楓の悩み】

 後半は、楓が使っていた父親の形見であるカメラが壊れてしまう話。
 楓が竹原に帰ってきたいと言い出したきっかけであり、自分をここまで成長させてくれたカメラ。今の楓にとっては言い方を変えれば父親の代わりである。そんなカメラが数時間の修理という短い期間であっても、自分の手から離れていってしまう。それは彼女にとって恐怖そのものであり、二度目の父親の喪失でもあるのかもしれない。だからこそ、楓はいつも通りの自分を見失ってしまったのかもしれない。
 そんな楓が少しおかしいことに気づける。それがかおるたちであり、積み重ねてきた時間が大切なものであったことを思わせる。そしてそんな楓にどう接していいのか。自分たちよりも長く接していたちひろに助けを求める。迷いのあるかおるへのちひろのセリフ。

「かおるちゃんの思うように行動すればいい。かおるちゃんはふうにょんをちゃんと見ている。だから大丈夫。」

正確ではないがこのようなセリフであった。もうこのセリフを聞いた時にぐっと来た。遠くはなれていて顔も見えないような状態なのに、楓を見てきたかおるを信じている。「彼女たちは本当にかけがえない関係を築いてきたんだなー」と。「ただじゃれあうだけじゃなくて、相手を真剣に見つめてきたんだな―」と。そのようなことを深く深く感じた。

 また、楓の憧憬の路のお願いは「来年も憧憬の路にみんなで来られますように」である。
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裏を返せば再び会うことが出来ないかもしれないという不安。その不安の原因は自分の中にあり、志穂美さんに付いて行きたいという思いによるものであったとも思う。でもそれ以上に、カメラが壊れてしまったことが大きいのではないかと思う。父親の形見のカメラはいつも楓を見守っていてくれると、どこか当たり前のように考えていて。でも実際にはそうではなかった。人の関係も同じであり、あたり前に続いていく関係などないということに気づいたからこそ、あそこまで不安で不安定な楓になってしまったのだと思う。そんな楓の不安を、

「こないだ撮った写真ね、まっしろだったの。」
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というセリフが表していたように感じた。まっしろで何も残っていない。人の関係はそんな簡単に切れるものではない。それでも、真っ白い写真はどこか不気味で、形にするためのカメラで形にできなかったもの。気持ちが少し落ち込んでいる時こそ、不安になってしまう気持ちもよくわかった。

 楓は自分の願いに気づけず、かおるの言葉で理解することが出来た。自分の気持ちに気づき、かおるに抱きついて泣く姿。その姿を見つめる巧美やマエストロたちの視線は楓を心から心配するものであり、楓がみなから愛されていることを再確認することが出来た。やっぱり楓はこの町にかえってくることができて本当に良かった。

前後編を通してのテーマ

 僕が感じた今作のテーマは「当たり前なものなどなくて、いつもそこにいつものようにあるというのは間違いである」ということ。前半は夢という物、後半は友達という人。それらはいつも身近にあるが、決してあたりまえじゃない。失ってしまう可能性が必ずあり、それを忘れてはいけないということ。楓たちを通してそれを再度教わった。

松来さんをふと思い出した悲しみ

 それにともなって今作を見ていて感じた松来さんがもういないということ。ARIAの時にも同様に感じたが、今回は作品がまだ終わっていないだけに前とは変わった形でズンと来るものがあった。ちもさんとして作品を彩っていただき、ありがとうございました。

まとめ

 今作はいろいろとくるものがありました。
 大学受験をはるか昔に通り過ぎた身としては、彼女たちが進路を真剣に見つめる姿勢はなんというか胸が詰まる思いで…。自分の将来を真剣に見つめる彼女たちには立派であり、もう本当に大人なんだなと感じました。次の作品で劇場版たまゆらは完結となります。彼女たちの門出を最後まで見守っていきましょう。

 以上です。それではまた別の記事でお会いしましょう。

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「たまゆら~卒業写真~」第3部 [Blu-ray]

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