アニメ『月がきれい』紹介記事――過去を振り返るように、今を見る
こんにちは。
2017年春アニメも残り1.5ヶ月となりましたが、作品の個性が強いクールとなったように思います。その中で群を抜いて好きなのが、『月がきれい』です。今回は前半(6話)まで見終えた上での、その紹介記事になります。
月がきれい
この作品は、特別ではない恋が中心にある。人は生きていれば、おそらく誰か好きになる。その瞬間は明確にあるわけではなく、いつの間にか気になって、いつの間にか好きになって、そして付き合いたいと思う。しかしこれを物語でやろうとすると非常に難しい。なぜなら好きになった理由がないのに、その好きになった状態に納得できないからである。
しかしこの作品は違う。特別な描写はなくとも、気になっている状態から好きになっていく状態に納得できるのである。その理由は特別視するきっかけから恋になっていくまでが、自分の経験の中にあるからである。
特別な恋
冒頭で述べたように、この作品は特別ではない恋が中心にあると述べた。僕が感じる特別な恋とは、自分にはできない恋のことである。極端な例を上げれば世界を救ったり、人生の大きな課題を抱える人を救ったりである。もっと現実的な例を上げれば、クラスの中心となって物事を進めたり、注目される人間になって魅力を振りまいたり。これらは自分から離れたものである。
この主人公はそういう人間ではない。だからといって極端に根暗であったり、大幅にコミュニケーションスキルが欠けているわけではない。ちょっと人見知りで自分の好きなことにだけ打ち込んでいたい中学生なのである。そしてこのキャラクターを見ていると、どこか昔の自分と重なっていく。恋に対して臆病であったり、人見知りであったり。だからこそ過去の自分の行動を見るようで応援したくなるのである。
特別ではない恋
だからこの主人公がしている恋は、どこか見覚えがある。ちょっとしたきっかけで気になり、でも声をかけることはできない。人前で会う勇気も、触れることも緊張する。少しずつ詰まっていく心の距離に、どこか懐かしさを覚える。
そしてすれ違いそうになる二人を見ていると「頑張れ!」「ちゃんと言うんだ!」と他人事とは思えないような声が出てしまう。それほどまでに、この作品の恋に心が揺さぶられていく。過去の自分ができなかったことを、彼には頑張って欲しいと重ねるように。
そして本人にとって特別ではない恋はない。自分にとってすべての恋は特別で大切にしたいものである。自分にとっては特別ではなかった彼の恋が、いつの間にか特別な恋になっていく。それがこの作品の凄さであり魅力である。
恋は人生の負担であり支え
恋をするというのは、非常に体力と精神力を使う。ずっと考えてしまうし、他のことが手につかなくなることもある。でも人生で辛いことがあったとき、恋愛関係がそれを救ってくれるときもある。いいことばっかりだけではないけど、すごくいいこともある。そんな力が恋愛にあることを思い出させてくれる。
そしてこの現実世界でもそうだが、付き合う目的は人それぞれである。一緒にいたい。ステータス。支えたい。支えられたい。もちろん色々あると思う。数多くある目的の中、ただ二人で支え合える純粋な関係を見ることができる。それは今のアニメには欠けていることが多いパーツであり、今後出会うことが難しい世界であると感じている。そしてそれを見て、今の自分を振り返ることができる。
最後に
この作品は限りなく現実に近い。他の恋愛作品を見ているときに感じる苦しさとは、違う形で胸が苦しくなる。頑張ってほしい。後悔しないでほしい。そんな感想が溢れ出してくるのが『月がきれい』という作品です。大切なものを思い出すことができる稀有な作品として、多くの人に見てもらえることを切に願っています。
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